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『青少年に有害! 子どもの「性」に怯える社会』 著:ジュディス・レヴァイン 訳:藤田真利子

岸田秀の『性的唯幻論序説』によると、「人間とは本能が壊れた動物であり、性交も本能ではできない」と言われています。この仮説が真実だとして、人間の子どもは成熟までに何らかの形で「性」について学ばなくては種が存続できないわけですが、この性を社会の要請する形に秩序立てる教育が性教育ということになるのでしょう。
この『青少年に有害!』という本は、アメリカにおける性教育の混乱ぷりを指摘した本であり、かなりリベラルな立場から性教育の本質について意見を述べています。
端的にいうと、アメリカでは子どもを性的なものから完璧に隔離する、という形式のキリスト教右派的な教育方針を採っている(た?)そうです。それには性的な情報に触れることを禁止することに始まり、合意の上での原始的な性的行為をした子どもを家族から引き離して特別な強制教育を施すという、偏執的なものまで含まれていました。
これに対して作者は実際の取り組みを取り上げ、性を年代に関係なくポジティブに解釈し、子どもの自主性を最大限尊重しながら科学的な知識を教え、最終的にお互いを思いやる建設的な性関係を構築できるようようにするべきだと主張します。
性教育とは、性という限りなくプライベートなものを教育という社会的なプラットフォームに載せる時点で非常にデリケートなものですが、「彼女妊娠させちゃった」とか性的に搾取されるとかDVにあうとか、知識がないゆえの不幸や他人の理不尽な悪意から自分自身を適切に守ることが出来る知識が身に付きさえすれば、そこに至る道は広く開かれているべきだと思います。

性交について学ぶことは、欲望のスイッチを「オン」にしたり、身体のスイッチを「ゴー」に切り替えるということではない。人はむしろ、その人自身の経験と、身につけたすべての決まりごとに応じたイメージや考え方に反応する。

のであって、最近日本でやろうとしているみたいに、なんでもいいからとりあえず子どもがエロいものを見られないように、法律で一括に規制しとけばいいやっていうのは、本書で言われているように教育上の怠慢だと思います。

青少年に有害! 子どもの「性」に怯える社会 青少年に有害! 子どもの「性」に怯える社会
(2004/06/18)
ジュディス・レヴァイン

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