著者は有川浩先生。
図書館戦争の2巻で名前が出てきて、登場人物たちの状況とオーバーラップしていたという小説を、実際に出版してみましたという形式の作品です。文庫版になっていたので買いました。
最近Twitter婚みたいな話がちょっと話題になりましたが、そんな感じで主人公は男性、あるサイトで、ある女性と本の感想をやり取りする中で相手の人間性に共感し、恋が芽生えるが、実は彼女には秘密があって…というストーリー。
その秘密がお互いを隔てる大きな壁となって立ちはだかる訳ですが、言葉の応酬で傷だらけになりながらも、徐々に相互理解を深めていきます。自分ならば序盤で逃げ出しとるわというような心と心のぶつかり合いを乗り越えていく主人公の男気と言うか、恋する男のパワーには個人的に敬服するというか、あてられそうになります。主人公はどう考えても最初からベタ惚れです。
彼女の秘密のところでデリケートなネタを取り扱っているのですが、最大限配慮してというか、真正面から思いやりを持って小説の材料としているように感じられました。あとがき、解説にもその事が触れられていたのですが、そちらも素晴らしかったです。本編を読んで何かしら感じるところがあるなら、読まずには終わるべからずかと。
CLAMPのマンガに個として強くある事、『十二国記』に自分ではどうにもならない事に対して腹をくくる事を教えられた自分ですが、色恋というか、「基本的に相互理解と思いやり」という、「ぼくのかんがえたれんあい」が多分にこの有川浩先生の影響を受けている事は本作品で良く分かりました。
個人的に全ジャンルの本の中で今年の五指、最低でも十指には入る良質の恋愛小説です。文庫版は400円と安価なので、キュンキュンしたい向きには是非オススメします。
レインツリーの国 (新潮文庫 あ 62-1) (2009/06/27) 有川 浩 |