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『遥か凍土のカナン2 旅の仲間』 著:芝村裕吏 挿画:しずまよしのり

大日本帝国陸軍の退役騎兵が,コサックのお姫さまとウクライナにコサック国家を作ろうとする物語、その2

デルフィニア戦記然り、銀河英雄伝説そして水滸伝然り、国家をめぐる話というのは古今東西巻を追うごとにいろいろな出自の個性的な仲間が増えるというのが定番ですが、上記の大作に比べれば小規模とはいえ、紆余曲折あって仲間が増えるのがこの第2巻です。この巻では2人旅の仲間が増えるのですが、そのうちの1人は著者の前著『マージナル・オペレーション』を読んでいれば、表紙でどういう人かバレバレですね。今後は主要登場人物がもうちょっと増えつつ、その他のモブが膨れ上がっていくんだろうなぁという予感がします。

個人的に心が動いたのは、世界の広がりでしょうか。インド~中央アジアの原野の描写から感じる空間の広がり、前述の某登場人物の来歴に関する時間的な広がり、本作は完全な幻想世界ではなく現実’みたいな世界観ですが、そういえば私自分が生きているこの世界にもこんな広大な時間的空間的な広がりがあるのだなと不思議な気持ちになります。作者は実際にあの辺を走り回っていたんだそうで、凄い話です。

主人公は前作と同じく、前巻から引き続いてすさまじい朴念仁です。で、ヒロインとのやりとりは本作の一つの大きな魅力なのでしょうが、それはここでは置いておいて、主人公、なかなか人としてドギツいことになっています。昔の人で、かつ軍人・兵士(士官?)だからという言葉では片づけづらいです。ヒロインのオレーナと出会う前から親交のあった某女性への感情が、なかなかねじれています。

しかし主人公パーティ、日本人、ウクライナ人…と人種的に多様ですね。日本人には想像しにくいですが、大陸の国ってのはこんな感じで人種的に雑多で混沌とした感じになるもんなんですかね?

前巻の第1巻全部と第2巻の第1章、第2章の冒頭がWebサイトで試読できますので、そちらを読まれてから買うかどうか判断されたらいかがでしょうか?

次巻は夏の終わりとのことなので、首を長くして待ちたいと思います。

<参考URL>
作品公式サイト(試し読みもこちらから):http://sai-zen-sen.jp/fictions/harukana/
第1巻発売時の著者、挿絵画家インタビュー:http://www.4gamer.net/games/999/G999905/20131114058/