玉川上水に入水して心中したはずの太宰治が2017年に転生した、というところから始まるコメディ?失礼な言い方をするなら「帰ってきたヒトラー」も似たような作品ですかね。あっちは社会風刺の効いたコメディですが、こっちはあくまで小説家ですので、純粋にエンターテインメントって感じです。後書きまでそれっぽいので、この本全体が転生した太宰治によるもの、ということなんでしょうか。
佐藤友哉先生というと、私の場合「物語シリーズ」で有名な西尾維新氏が出てきたあたりの若い頃の作品をチラッと目にしたことがあるくらいだったと記憶しています。文芸誌ファウストで
惜しむらくは太宰治は教科書に載っていた「走れメロス」くらいしか読んだことがなかったということです。読後に青空文庫でいくつか出だしだけかじってみると、確かに本書のような文体で句点の使い方が印象的。なんとなくヌルヌルした感じの言葉遣いです。そんな状態で読んでも普通に面白かったんですが、下知識があればもっと面白いんでしょうか?下敷きになっている諸作品や、そこから滲み出る往時の太宰の性格や生き方をあれこれ想像するのは、後世の人間の特権ですね。
扱われる事象も現代的ですし、太宰治の作品と生涯に興味を持つきっかけとして良い作品の1つなのではないでしょうか?