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『紫色のクオリア』著:うえお久光 挿画:綱島志朗

なぜか人間がロボットに見える少女毬井(まりい)ゆかり、彼女からすると究極の「汎」用型ロボットに見えるボーイッシュな少女波濤学(はとうまなぶ)。この2人の少女と、ゆかりの幼なじみの天条七美(てんじょうななみ)、ジョウントという組織から来たという天才少女アリス・フォイル。登場人物はこの4人で、この4人が仲良くなるまでの気の遠くなるような長い時間の話……読者が観測する作中の時間では。そう、日本のオタクカルチャーにはよくある話ですが、出てくるのが女の子というだけで、本作はSFの白眉です。それも、銀河英雄伝説のような宇宙船がドンパチやらないタイプの。仕掛けがよくできているだけでなく、物語としてのペース配分、そして最後の種明かしにいたるまで、奇跡的なバランスで名作として成立しています。こればっかりは読めという感じ。

某白饅頭の人が傑作と言っていた一作。名前は聞いたことがあったものの、著者がうえお久光先生で驚きました。オタクの履歴書では書いてないんですが、ほぼ最初に読んだライトノベルは、うえお久光先生の『悪魔のミカタ』でした(しかも2巻)。あと、綱島志朗さんと言えばなぜか女の子がレイプされそうになるロボットマンガ、『ジンキ・エクステンド』の作者です。これも大学時代に読んでました。ということで、本作を手に取り、はからずも昔を懐かしむことになりました。

SFライトノベルの、そして単巻で完結するライトノベルとしてとてもよくできていて、とても面白い作品。超オススメです。本作の元ネタとなる、同じような仕掛けをあつかったいくつか著名なSF作品があるそうなのですが、蒙昧なのでまだ読んだことがないのです。近いうちに読んでみようと思います。