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『ご冗談でしょうファインマンさん』著:リチャード・P・ファインマン 訳:大貫昌子

ノーベル賞を受賞した物理学者リチャード・ファインマン先生の逸話集。本人が書いたというよりは、本人がパーティーの席なんかでおもしろおかしく語るエピソードを集めたものを他人が口述筆記?したもののようである。方々で名著と言われるが、確かにとても面白かった。

とにかく逸話から受ける印象は、「とびきり頭がよくて、人生を楽しんでいる、スケベなオッサン」という感じ。一つのことを突き詰めた結果、そこから得られるある種の自信や確信が他の様々なことににじみ出ている感じ。これくらい人生を楽しめたなら、さぞ素晴らしいだろうなと思わされる。変にえらぶったりせず、かといって官僚主義におもねることもなく、ただひたすらに自分のペースを守るのは実にうらやましいというか、なんというか。本書を読めば絵を描いてみたくなるし、楽器を練習してみたくなるし、ストリップバーに出かけてみたくなること請け合い。

この本ではそういう印象なのだが、物理学者としては、「経路積分」という独特の方法で量子力学にアプローチして、最初は異端視されたりしたが、自分で道を切り開いて今では様々な分野に応用されていたりする。そんな学者としてのエピソードが解説で補強されていたりして、本文も面白いのだけれど、本全体としてもファインマン先生の人となり、魅力を存分に伝える一冊になっていると思われる。

物理をちょっとかじったこともある人もない人も、とにかく「とびきり頭がよくて、人生を楽しんでいる、スケベなオッサン」の自然体のあり方が、なんとなく心を軽くしてくれるかもしれない一冊である。特に現代の日本においては、たとえ学者であったとしてもこんな風に生きるのは至難の業だとは思うが……。