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『人間使い捨て国家』著:明石順平

労働基準法を無視して長時間働かせたり、払うべき給料を払わなかったりする所謂「ブラック企業」に対する裁判を多数担当している弁護士が、日本国の労働関係の法制度の問題点を指摘、批判している本。経団連や竹中平蔵氏を筆頭とする人材派遣業界と政界の癒着に日本の劣悪な労働環境の原因を見いだし、その改善のためのポイントや労働者個人個人に出来る対策を取り上げている。

「人間使い捨て」という剣呑なタイトルだが、本書では企業の邪悪さだけでなく、国家ぐるみで人間を使い潰すような法制度になっているということが指摘されている。最近フランチャイズオーナーと本社の間のトラブルがニュースにもなり始めているコンビニフランチャイズ、年俸制、固定残業代、高度プロフェッショナル制度、外国人技能実習生等々、そもそも日本の労働関係法制の中に、「ブラック企業」を跳梁跋扈させるような抜け穴(使用者側に労働時間の記録義務がなかったり、労働基準法違反の罰則が他の刑事罰に比べても甘かったり、そもそも労働基準監督官が諸外国に比べて少なかったり等々)が設定されている、というのが著者の指摘である。確かに、著作権法違反より過労死させた使用者の罰則が軽いというのはどうにもおかしい。

2019年に日本は移民解禁をしたわけだが、そもそも待遇が悪すぎて外国人から選ばれない国になっていたり、(21世紀の国力や経済を左右する重要なセクターである)IT系だと優秀な人たちから外資に引き抜かれていっていたり、「人間使い捨て」ではいよいよ上手くいかなくなる兆候が見え始めており、国にも経営者にも、労働者にむち打つ以外の別の冴えたやり方を考え出してもらいたいもんである。

この国で労働者として働くなら、とにかく一読しておいて損はない一冊である。5年後10年後にはこの本に書かれている問題点が1つでも良いので改善されていることを願ってやまない。