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『シャーリー・ホームズと緋色の憂鬱』著:高殿円 挿画:雪広うたこ

シャーロック・ホームズには二次創作にあたる「パスティーシュ」という物が多数作られており(様々な作品に様々な二次創作物が連なる現代の日本においては珍しくもないわけだが)、それに連なる一作。「シャーリー」というタイトルから分かるようにホームズもワトソン(ジョン・ワトソン→ジョー・ワトソン)もレストレード警部(グロリア・レストレード)もモリアーティ教授(ジェームズ・モリアーティ→ヴァージニア・モリアーティ)もみんな女性化しており、舞台は現代、主役二人を中心に設定も大胆なアレンジが為されている。

「大胆な」アレンジと書いたが、その設定が不要で不快かと言われると全くそのようなことはなく、これぐらいブリブリの設定は大好きである。ホームズとワトソン、二人とも大変魅力的な人物で、関係性は今風に言うならば「尊い」というやつ。いわゆるところの「百合」好きなら読んで損はないだろう。個人的に惜しむらくは、ロンドンの地名や地理に疎かったところ。実在の都市な訳だから旅行ガイドブックか、グーグルマップでも見ながら読めば良かったかもしれない。実際に行っていればより一層楽しめただろう。

書き下ろしではなく、雑誌に連載された小説の集成で続き物の第一巻という感じで、色々思わせぶりな断章が含まれており、是非とも続きが読みたい(このまま続刊が出ないと個人的には生殺しである)。