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『ラッセル 幸福論』 著:バートランド・ラッセル

著者はかのバートランド・ラッセル
論理学の大家という印象しかありませんで、こんな本を書いているとは露知らず、はじめは著者が誰なのか分かりませんでした。
2部仕立てで第1部で不幸の原因を探り、第2部でそれを踏まえたうえで幸福になるための方法を提案するというものになっています。
ある方面からの幸福になりやすい心の持ち方などを提案している著作はいくらか読んできたことがありますが、ここまで包括的に扱っているものは初めて読みました。また、第1部の分析の鋭さも素晴らしくて、この本の原作が1930年に書かれたとは思えないほど、現代でも通用するようなものです。
感心した文は多々ありますが、その中から一節。

成功感によって生活がエンジョイしやすくなることは、私も否定はしない。 ―中略― また、金というものが、ある一点までは幸福をいやます上で大いに役立つことも、私は否定しない。 ―中略― 私が主張したいのは、成功は幸福の一つの要素でしかないので、成功を得るために他の要素がすべて犠牲にされたとすれば、あまりにも高い代価を支払ったことになる、ということである。

やたらに成功のみが強調される今の時代に、成功を志して日々努力しつつも、アンチテーゼとして心に留めておいてもいい一節だと思いますが。
原文はフリーで読めるそうです。しかし、原文のタイトルはConquest~なんですな。
Bertrand Russell’s The Conquest of Happiness