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『ケーキの切れない非行少年たち』著:宮口幸治

本書は、長年に渡って青少年の矯正施設等で児童精神科医として働いてきた筆者が、所謂少年院のような施設に入所してくる少年少女たち(そしてしばしば彼らは少年院や、刑務所に戻ってきたりする)がどのような子どもたちで、その子たちがどのような共通する特徴を持っているか、原因が何でどのような対処を行えば彼ら彼女らをその境遇から這い上がらせることが出来るのか、私たちにどんなサポートが出来るのかを書いている。

人間の能力にはばらつきがあって、いわゆる「認知機能」にも高低がある。社会が要求する水準から著しく低い場合には行政の支援があるわけだが、そこはグラデーションなので、当然グレーゾーンには支援を必要としつつも受けられない人たちが出てきてしまう。筆者によれば彼らは健常者向けの学校教育を十分に受けることができず、社会においても健常者に求める水準の能力を発揮できない(ケーキが切れないというのは基本的な図形の認知機能すら危うい子たちが少年院にいるということを表している)場合があり、社会から孤立して犯罪・非行に走ってしまう。

最初から「受験」で選別が行われるような国立や私立の学校ならともかく、公立の小中学校で教育を受けたことがあれば、もしかしたらクラスや学年で一人や二人、本書の記載から思い浮かぶ顔が出てくるかもしれない。

似たような題材を扱った本には山本穣司の「累犯障害者」という本があるが、それに比べると本書はまだ脳の可塑性が高く、教育で改善の可能性が大きい子どもを対象としていることと、筆者考案の「コグトレ」という解決策が提示されているためまだ希望がある感じがした。