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『バッタを倒しにアフリカへ』 前野・ウルド・浩太郎

失礼ながら存じ上げなかったが、有名なバッタ研究者の方だそうで、本書を読んですっかりファンになってしまった。

今時の食うに困っていたポスドクのお兄さんが、サバクトビバッタというバッタの蝗害に苦しむアフリカ モーリタニアに突撃し、様々なトラブルに遭いつつも、色々な人の助けを借りながら職を確保するサクセスストーリー。

研究対象であるバッタに対する愛情、情熱、食い詰めていたとはいえ、言葉も通じない、文化も大きく異なる異国に飛び込む勇気とバイタリティ、不安な状況でも自分を信じるメンタルの強さ(海外学振の任期の2年以上、大群が発生するのを待っていたというのだから肝の太さがすごい)、成功に必要なモノがあるとすると正直言ってあとはチャンスだけという感じで、たしかにそれをつかんでいるのである。研究所のババ所長、ランドクルーザーを縦横無尽に運転する相棒のティジャニ、いずれもキャラが濃いし、前野氏を「ドクター」と敬意を込めて呼び、「お前ならやれるはずだ」と信じて励ましてくれる。前野氏は実に同僚に恵まれている。

基本的に読んでいて楽しいのだが、個人的には昨今の日本のアカデミアのしょっぱさやら、厳しさやらも垣間見えて古傷が多少疼きもする。

ご本人が本書の中で、さる編集者の方に文章の薫陶を受けたと語っているが、たしかに書きぶりが大変魅力的で、内容も上記のように本当に面白い(個人的に「オタク」「マニア」の語りを聞くのが好きなのでなおさら)ので、人に勧めたくなる良書である。