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『セックスボランティア』著:河合香織

性というのは非常に複雑で繊細なものであって、コミュニケーション、承認、性欲の充足、排泄欲求のようなものなど、各個人にとっても、社会的にも、複数の意味が重なり合っている。障碍者にだって、人間である以上性欲がある。そんな当たり前だがデリケートな問題を、誠実に綴ったルポルタージュ。

日本だと、養護学校の性教育に対して国会議員が文句をつけたり(そもそも健常者に対してもきちんとした性教育が行われているのかという問題もあるけど)、特に障碍者の性というのはタブーになっているところがある。本書では、売春を利用したり、恋人や配偶者がいたり、いわゆるセフレがいたり、色々な形で性と向き合っている障碍者が出てくる。取り上げられている事例は日本とオランダで、オランダというと公娼制度があったり、ソフトドラッグが合法的に利用できたりとオープンで開明的なイメージがあり、障碍者の射精の介助をしてくれるセックスボランティアの制度も実際にあるそうだ。しかし、本書によるとオランダにおいても、支援する人たちも支援される人たちも、やはり悩みながら向き合っており、性というのはどこまでいっても正解のない世界なんだと思わされる。

今現在健常で、かつ障碍者と日常接することがなくても、自分や家族や親しい友人が、明日交通事故で障碍者になるかもしれない、生まれてくる自分の子どもに障碍があるかもしれない。結局自分のことにならないと本当のところは分からないものだとは思うが、それでも本書は、なかなか見えないけれど、確かにそこにあるものに対する想像力を喚起してくれる。